鉛筆ほどの太さに折りたたまれた生体弁を装着したカテーテルを、大ももの付け根の1cm弱の小さな穴から大腿動脈に入れて、心臓まで運びます。
カテーテル治療
カテーテル治療は、開胸することなく、また心臓も止めることもありません。また、患者さんへの体への負担が少なく、入院期間が短いことが特長です。但し、最適な治療方法は患者さんの状態や病気の種類によって異なり、患者さんに適用される治療方法は、患者さんの年齢や全身状態、弁の形態などから医師が総合的に判断します。
経カテーテル大動脈弁治療 (TAVI: Transcatheter Aortic Valve Implantationの略称。
「タビ 」と読む)
TAVIは、重症の大動脈弁狭窄症に対する治療法です。カテーテルを使って人工弁を患者さんの心臓に留置します。2002年にヨーロッパで始まり、日本では2013年に保険適用の対象となりました。
TAVIのアプローチ法
多くの場合は、太ももの付け根の血管から人工弁(生体弁)を装着したカテーテルを挿入する「経大腿アプローチ(TF)」で行われます。他には、肋骨の間を小さく切開し、心臓の先端(心尖部)からカテーテルを挿入する「経心尖アプローチ(TA)」や胸骨上部を小さく切開し、上行大動脈からカテーテルを挿入する「経大動脈アプローチ(TAo)」、鎖骨下動脈からカテーテルを挿入する「経鎖骨下動脈アプローチ(TSc)」、首の動脈(頸動脈)からカテーテルを挿入する「経頸動脈アプローチ(TC)」もあります。どのアプローチ法も、人工弁が心臓の大動脈弁の位置に到達し、カテーテルで留置された直後から、患者さんの新たな弁として機能します。
経大腿アプローチの例
生体弁が大動脈弁の位置に到達したらバルーン(ふうせん)を膨 らませ、生体弁を広げ、留置します。
生体弁を留置した後は、カテーテルを抜き取ります。
生体弁は留置された直後から、患者さんの新たな弁として機能します。
カテーテル治療 (TAVI) をご検討する
患者様・ご家族向けに、TAVIに関する
情報をご紹介します
経皮的僧帽弁接合不全修復システム
経皮的僧帽弁接合不全修復システムは、重症の僧帽弁閉鎖不全症に対する治療法(TEER)です。カテーテルを使って、僧帽弁の弁尖を把持して近付けるインプラントを留置することによって治療します。アプローチ方法は、太ももの付け根の太い静脈からカテーテルを挿入して行われます。
外科的治療
手術では、胸部を開いて心臓を切開し、悪くなった弁の機能を回復させます
弁自体が傷んで重度化した場合は、薬で元通りに治すことはできません。弁を根本的に直すには、手術(外科的治療もしくはカテーテル治療)が必要となります。外科的治療は、胸を開いて、一時的に心臓と肺の機能を代行する人工心肺装置を用い、心臓を切開して弁の機能を回復させる開心術という方法がとられます。胸を開く方法には、胸の中央にある胸骨を切る方法と右胸の肋骨の間を切る方法があります。弁を治す手術には、弁形成術と弁置換術の2種類があります。
弁形成術と弁置換術の選択について
僧帽弁の場合
僧帽弁の逆流(閉鎖不全症)は、患者さん自身の弁を残して修復する弁形成術が第一選択となります。弁や心筋の傷みが非常に高度な場合は、弁置換術が選択されることもあります。僧帽弁狭窄症はほとんどの場合に弁置換術が選択されます。
大動脈弁の場合
大動脈弁の疾患には、悪くなった弁を取り換える弁置換術が第一選択の治療法となっています。逆流(大動脈弁閉鎖不全症)には、弁形成術が行われることもあります。
三尖弁の場合
三尖弁の逆流(三尖弁閉鎖不全症)には、多くの場合弁形成術が行われます。非常に進行した三尖弁閉鎖不全症には、弁置換術が行われることもあります。三尖弁狭窄症は非常にまれな疾患ですが、弁置換術が選択されます。
掲載された情報は、あくまで一般的な解釈に基づいており、特定の治療方法・手技等を推奨するものではありません。ご自身の診断および治療方法については、必ず医師とご相談ください。